オオトモヨシヤス

　残念ながらオオトモヨシヤスについての詳細は分からない。

　昭和２０年代末期から昭和３０年代中盤にかけて、中村書店、東京漫画、若木書房などの貸本漫画をはじめ、少年画報、なかよし等、幅広く活躍していた。
　 不思議なことにこの人の作品は、後期になるほど絵が荒れてくる。昭和３０年代初めころが一番脂が乗っていた様である。この『黒い太陽』もその時期に書かれた作品のひとつである。

　『黒い太陽』は、当時の社会的背景を反映し、放射能汚染がテーマとして取り入れられている。冒頭の核爆発、恐竜の出現、暗躍する世界征服を目論む組織、ロボット、円盤、巨大化する昆虫、誘拐される美少女、わずか１００頁に満たない作品に大盤振る舞いといえるほどの各種の要素がてんこ盛りに盛り込まれる（さすがに未消化ではある）。

　ストーリーは、放射能による大気汚染で太陽が黒く見え始め、それをきっかけに氷河期が始まり、人類が衰亡するというシニカルな展開をたどる。ヒロインの死、人類の滅亡という暗い色調が当時の子供に受けたかどうかは分からないが、何らかのカタルシスを与えたのではないだろうか。

　本作品の見所は、５箇所もある見開きの彩色画である。いずれも迫力があり、当時のオオトモヨシヤスの画力をうかがう事が出来る。

　状態的には、カバー欠け、背痛み、惜しいことに後半１枚落丁がある。総合的な程度としては下。

他にオオトモヨシヤス作品として確認できたものを列挙する。
中村書店：「金髪のジェニイ」「午前０時」「影のない少女」「南極大陸」「わすれな草」「貝がら物語」「小さな宝石箱」「赤い宝石箱」「白蛇伝」
東京漫画：「うぐいす姫」
若木書房：「こだま」「風車」等に短編。まりちゃんシリーズなど
少年画報：「スピード探偵桃太郎」
光文社・少女：「泣かないで泣かないで」
講談社・なかよし：「小公子」「花もようの手ぶくろ」

見開きタイトル画、迫力の”謎の爆発”。

後半クライマックスでの見開き絵。円盤・ロボット・美少女の三点盛り（笑）